シニア向け介護食の市場が拡大しつつある3つの背景
シニアが総人口の約30%を占める現在、介護食の市場は拡大傾向にあります。噛んだり飲み込んだりする力が弱まったシニアのための介護食は、老老介護や介護職員の負担軽減の対策として効果的です。
食材の味や食感を活かした食品も開発され、シニアのニーズに合うのも拡大理由の1つでしょう。
スーパーやドラッグストアでも気軽に購入できるようになりました。在宅介護の増加にともない、介護食の市場はさらなる拡大が期待されます。
高齢化が進み、超高齢化社会が到来している日本では、シニア向けの介護食市場が拡大しています。
2017年には1,597億円であった高齢者向けの食品市場が、2025年には約2,000億円まで拡大するというデータもあります。[注1]
その背景には、ただ単に高齢者人口の増加というだけではなく、シニアや介護施設のニーズに応えている企業の努力もあるでしょう。
今回は、シニア向け介護食の市場拡大における背景を3つに分けて解説したいと思います。
3人に1人がシニアとなり、高齢者人口が増加している
2018年9月現在、国内の高齢者(65歳以上)の人口は3,557万人で、総人口に占める割合は28.1%です。
第2次ベビーブームに誕生した人々が高齢者となる2040年には、総人口の35.3%になると見込まれています。[注2]
そのため、シニア向け商品・サービスの市場が拡大しつつありますが、その中でも「食」は生きる上で絶対に欠かせません。
噛んだり飲み込む力が弱まってくる高齢者向けに食材を細かく刻んだり、飲み込みやすくペースト状にするなどの加工がされた介護食のニーズが高まっています。
高齢化した家族や介護職の負担軽減のため便利な加工食品が求められている
シニア人口の増加とともに総人口は減少を続けており、シニアがシニアを介護する「老老介護」や、介護施設の慢性的な人員不足という問題が生まれています。
その対策の1つとして、負担軽減を目的とした便利な加工食品のニーズが高まっています。
実際に、刻みんだものやピューレ状に加工した食品や、舌でつぶせる食品が導入されている介護施設も少なくありません。
大手食品メーカーや某牛丼チェーンなどの企業も新たに参入し市場が活性化しています。
また、食事準備の負担が大きい老老介護の世帯においても、温めるだけで食べられる介護食品が注目されています。
全国に店舗のある某大手量販店では自社ブランドの介護食を販売していますが、品揃えを従来の倍に増やしたケースもあるほどです。
市場が拡大しているドラッグストアや通販などでもさまざまな種類の介護食が販売されています。
在宅介護で加工済みの介護食を利用する理由としては、「咀嚼や飲み込みが難しくなったから」というのが50%で、次に「調理の手間が省けるから」「病院や介護施設で勧められたから」というものが多いようです。[注3]。
おいしい介護食や高付加価値の介護食も開発されていて人気が高まっている
おいしいものを食べたいというのは、いくつになっても変わらないもので、介護が必要なシニアにとって食事は数少ない楽しみの1つです。
栄養や食べやすさだけではなく、おいしさや見た目も重要なポイントです。
噛む力や飲み込む力が弱くなったシニアでも安全に食事ができるように開発されたのがムース食ですが、開発当初は食材の食感や味わいがなく、見た目も味気がないとシニアに不人気でした。
そこでメーカーの努力の結果、食材本来の風味や形を保ったムース食が開発されました。
最初は施設などの業務用だけでしたが、シニアの間でじわじわと人気になり、在宅向けにも流通するようになりました。
昨今では、富裕層のシニア向けの高単価・高付加価値のついた介護食のニーズも高まっています。
市販の介護食はおいしくないというイメージが薄まってきたことも市場拡大の背景の1つといえるでしょう。
介護食の市場はシニアが増えていく今後も拡大傾向にあると予測できる
総人口の30%前後がシニアという超高齢化社会を迎えた現在、噛んだり飲み込んだりする力が弱くなったシニアのために介護食のニーズが高まっています。
老老介護や介護職員の負担を軽減するためにも加工済みの介護食品はこれからさらに注目されていくでしょう。栄養や食べやすさだけではなく、見た目や味もいい食品も開発され、シニア世代にとっては数少ない楽しみの1つでもある食の充実が期待されます。
[注1]富士経済:高齢者向け食品市場の将来展望2017:https://www.fuji-keizai.co.jp/market/17084.html
[注2]総務省統計局:高齢者の人口:https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html
[注3]三菱UFJリサーチ&コンサルティング:高齢者向け食品・食事提供サービス等実態調査事業報告書:http://www.maff.go.jp/j/shokusan/eat/pdf/houkoku1.pdf
役立つ最新情報を
お届けいたします!